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フルートの音色を飾る「トリル」運指と上手に吹くコツとは?

フルートの演奏により華やかな印象を与えるトリルのおすすめの練習方法や運指を覚えるコツまでを詳しくご紹介します。これを読めば、初心者の方もトリルの基礎から学ぶことができます。
フルートの音色を飾る「トリル」運指と上手に吹くコツとは?

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吹奏楽でもオーケストラでも、フルートの「トリル」が効果的に使われるシーンが多くあります。リロリロリロ~と小鳥のさえずりのように聴こえる「トリル」。実際に吹いてみると、音階によって指使いが難しかったり、演奏に工夫が必要な場合があります。フルートの演奏では良く出てくる「トリル」について詳しく見てみましょう。

フルートでよくある「トリル」とは?

フルートのソロや吹奏楽曲、オーケストラでも聴こえる、小鳥の歌声のような「フルート」のリロリロリロ~という音。これが「トリル」です。

トリルとは、主体となる音(主音)に対して、半音または全音を加えて、交互に吹くことによって奏でられる「装飾音」のこと。 具体的には主音に一音だけをプラスする「ピロ!」というトリルもあれば、連続して「リロリロリロ~」と長く吹くトリルもあります。

2音だけのトリルは、主音から半音だけ上下します。
音階によっては特殊な指使いを要求されるため、楽譜と運指のチェックが重要になります。

替え指とトリルキー

フルートでトリルを吹く場合、通常の音階での指使いとは違った運指になる音があります。近い指を動かすことで2音を交互になりやすくするためです。
このため、フルートには「トリルキー」が元々ついています。

また、トリルキーでは出ない音階の場合は「替え指」という、トリル特有の運指があります。
いずれにせよ、トリルはあくまでも「飾り」としての音です。主音をしっかり吹けるようになれば、自然にトリルも上手になるでしょう。

曲によっては、フルートのトリルが重要な要素となる場合がありますので、運指も含めて段階的に練習することが大切です。

フルートでトリルがよく使われる3曲

フルートのトリルが特徴的に使われている曲をご紹介します。

アメイジング・グレイス

賛美歌として有名な「アメイジング・グレイス」を、ジャズ・ゴスペル風にアレンジしたバージョンです。

特に、ジャズフルートではソロでの演奏が多いため、トリルをメロディーやアドリブに頻繁に使用します。歌うように吹くジャズフルートやポップス曲では、トリルも「声の一部」のように解釈することが多いようです。

フルート協奏曲(モーツァルト)

世界的なフルーティスト「エマニュエル・パユ」の流れるような美しいトリルが聴ける動画です。
モーツァルトは、装飾音が多い作曲家として知られています。中でも「フルート協奏曲」は、速い音の流れの中に、トリルがたくさん含まれています。

「モーツァルトは、フルート嫌いだった」という伝説があります。モーツァルトの時代のフルートは、まだベーム式ではなく音程が安定しませんでした。そして、お金を稼ぐために作曲を依頼されれば断ることができませんでした。

フルートの曲の依頼の多さに、モーツァルト疲弊して、妻に「フルートの曲ばかりだ」と愚痴の手紙を書いたことが、フルート嫌いと解釈されたようです。

陽はまた昇る~The Sun Will Rise Again

吹奏楽の名曲「The Sun Will Rise Again ~陽はまた昇る~」は、フルートとクラリネットのトリルからはじまります。作曲家のフィリップ・スパークはこの他にも多くの吹奏楽曲を作曲しています。

フルートのトリルはこの曲のように「朝」や「夜明け」といったテーマの曲に多く使われています。また、吹奏楽曲にはフルートのトリルからスタートする曲も多いので、フルート奏者は特に気が抜けないシーンでもあります。

小さいけど見逃さないで!トリル記号

楽譜の上に書かれている「tr」や波線(~)の連続が「トリル」を表しています。

フルートの場合は1段のみの楽譜ですので、トリル記号も、音符の近くや楽譜の上部を探せばすぐ見つかります。 また、2音で構成されるトリルの場合、装飾音の音符が小さく書かれている場合があります。

いずれにせよ、トリルは「飾り」として、小さく書かれる傾向にあるので、楽譜上で見落としがないか、チェックしておく必要があります。

フルートのトリルは運指を覚えるコツ

フルートの一般的な運指表には、音階としては掲載されているものの、トリルキーを使った図も含めて載っていることはごく稀です。音階の運指と混乱しないためですので、トリルのための運指は、別に覚えたほうが良さそうです。

トリルの運指はアプリで覚えよう

『Flute Fingerings Free』

スマホでフルートのトリルの運指を覚える場合は、シンプルなアプリがおすすめです。

「主音」の運指は緑色で書かれており、トリルを選ぶと、動かすキーは赤に表示されます。音声は「主音」のみですが、目視確認のためのアプリと、割り切って使ったほうが良いでしょう。
※掲載のFlute Fingerings FreeはGoogle Play(Android)のみです

トリルの運指が掲載されているサイトで確認

『フルート・ピッコロ・吹奏楽+α』

ご紹介するサイトはフルート・ピッコロ・吹奏楽+αです。
フルートの運指表を掲載されているサイトは多くありますが、トリルを図解で載せているサイトは中々ないものです。PCやタブレットなど、おおきな画面で確認しながら練習したい方におすすめです。

フルートのトリルおすすめ練習方法

※フルーティスト立花雅和さんの「トリルレッスン」

「基本なくして応用なし」とも言われます。フルートも装飾音であるトリルは、やはり基礎を大事にしつつ「プラスの技法」として捉えたほうが良いようです。

フルートをしっかり構える

トリルの練習を始めて、最初につまずきやすいのは「指がうまく動かない」という点です。フルートを支えているのは「左手親指/右手人差し指付け根/顎」の3点です。

特に「左手親指」を使うトリルでは、フルート全体のバランスを失いやすくなります。
フルートを、右手親指と顎でしっかり支えて構え、トリルで楽器がブレないよう心がけましょう。

まず主音を安定させる

トリルが長く続く曲でない限り、トリルは「飾りの音」です。一曲通しで吹くのに慣れていない場合は、トリルを抜かして主音のみで演奏します。安定して主音が吹けるようになってから、トリルの練習を徐々に加えていきます。
あくまでも「飾り」ということを忘れず、主音をしっかり出すように意識してみましょう。

まずは二音の長短を変えてじっくり練習

フルートのトリルの練習では、最初から同じ音の長さで、リロリロ~と吹くのではなく、トリルとなる二音を「長く→短く」から「短く→長く」のようにじっくり練習するのがコツです。前後の音を、じっくり確認しながら練習してみましょう。

トリルが上手くなるには柔軟性も大事

フルートの構えやアンブシュアが安定しても、トリルが上手に鳴らないと、悩むシーンがあります。
実は、トリルは装飾音の意味合いが強いため、他の管楽器よりもフルートに、トリルを多く入れ込む作曲家が多いものです。そのため、演奏中に指や腕が疲れるという、ありきたりな原因も考えられます。

運指だけじゃない!フルートのトリル「C#」を上手に吹くコツ

フルートは本来、トリルキーで吹けない音階のトリルは、音を出すことさえ困難と言われています。この場合、フルートの通常の運指に加え「替え指」でトリルを乗り切ることもあります。

そして、フルートの運指で最も難しいと言われているのが「C#」(ド#)を主音とするトリルです。替え指でも安定して吹くのが難しい「C#トリル」にも、上手に吹くコツがあります。

それが、「ヴィブラート」を掛けながらトリルを吹くという合わせ技です。フルートは息を吹き入れる角度によって、音階を上下させることができます。

この方法と「ヴィブラート」を組み合わせて、「C#」のトリルを練習してみてください。

まとめ

フルートらしい音が作れる「トリル」ですが、トリルキーを使ったり、主音の運指と違ったりと、初心者には混乱することも多いものです。 実際に吹けるようになると、美しく華やかな演奏になりますが、「トリル」は、あくまでもオプション機能のような音とも言えます。

まずは、「フルートの構え」や「アンブシュアの安定」などの基礎練習を第一に心がけましょう。 主音の運指をしっかり覚えてから、トリルの運指を後から覚えても、遅くはありません。じっくり焦らずに良い音を創ってくださいね。

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藤加祐子 /
ビギナーズ編集部 ライター

仙台市出身在住。フリーライター・写真家・タティングレース作家。古書店巡りとフルート演奏が趣味。仙台フィルの演奏を聴くのが自分へのご褒美です。

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