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ベースでハーモニクスを出す方法やコツを解説
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ハーモニクス(Harmonics)は英語で倍音を示します。ベースにおいてもその名の通り基音を出さずに倍音だけを出す特殊なものです。
本記事ではハーモニクスの概念や出す方法、出るポジション、ピッキングハーモニクスなどについて解説いたします。
目次
ハーモニクスとは
ハーモニクスは倍音を指しますが、それでは倍音とはどのようなものなのでしょうか。
倍音とは、元となる音(基音と呼びます)に対して、2倍、3倍の周波数で振動する音を指すものです。例えば、100Hzの基音が鳴っている時、200Hz、300Hz……と倍音が鳴っています。
同じCの音を出しても、ベースやギターによって音が違うのはこの倍音の内容が異なることもその要因のひとつです。
例えば、電話の「ピポパポ」という音には倍音がありません。そのために、非常に味気のない音に聞こえます。
少し本記事の本題とはずれますが、基音と倍音では音程が異なり、ベースのサウンドとして基音が薄すぎると本来出したい音とは異なる音に聞こえてしまいます。
これは非常に大きな問題で、例えばEmというコードを鳴らしたい時、基本的にはベースはEの音を出すことによってコードがEmであることを示す必要があります。
もしもベースのセッティングが悪いなどの理由で基音が薄く、倍音ばかりが聞こえてAのような音に聞こえた場合、コードはEmではなくA7、Am7などのコードであるかのように響きます。
このように、ベースが音楽の中で持つ役割の上では倍音と基音を上手くコントロールすることは重要です。
ハーモニクスを出す方法
ハーモニクスを出すには、適したポジションで弦の振動を上手く抑える必要があります。
通常、音を出す時には弦を押さえてフレットに押し付けます。しかし、ハーモニクスを出す場合には振動を半分くらいに減らすようなイメージで弦に軽く触れてピッキング、すぐに手を離します。
触るポジションによっては、ハーモニクスが出づらいことがあります。その場合はブリッジにより近い部分で強いピッキングをするのがハーモニクスを出すコツです。
ハーモニクスが出るポジション
論理的に考えるとハーモニクスが出るポジションは無限にありますが、実用上は限られます。
具体的には、4フレット、5フレット、7フレット、12フレットのポジションが実用上使うポイントです。
音程としては、下記の通りの音が鳴ります。
E弦の場合、4フレット=A♭、5フレット=E、7フレット=B、12フレット=E。
A弦の場合、4フレット=D♭、5フレット=A、7フレット=E、12フレット=A。
D弦の場合、4フレット=G♭、5フレット=D、7フレット=A、12フレット=D。
G弦の場合、4フレット=B、5フレット=G、7フレット=D、12フレット=G。
ハーモニクスが使えるコード
4本の弦で出せるハーモニクスは前述の内容から、A♭、E、B、D♭、A、G♭、D、B、Gと非常に多様です。
例えば、D♭マイナーのコード上ではA♭は5度、Eは短3度であるため、美しく調和するでしょう。E弦で出せるB、D弦で出せるG♭、G弦で出せるDを同時に出すとそのコードはBマイナーとして響きます。
使える音が非常に多いので、構成音やメロディとしてワークするコードは多くあります。それに加えて、音程は無視して、例えばドラムのシンバルのように効果音的に使うことも可能です。
使い方次第で様々な効果を発揮することがわかります。
ピッキングハーモニクスとは
0フレット(ナット)からの4フレット、5フレット、7フレット、12フレット、それぞれのフレットまでの距離と同じ距離をブリッジ(サドル)から測り、そこを同じように軽く押さえてピッキングしてみてください。
そうすると0フレットからの距離と同じ距離で同じ音程が出ることがわかると思います。
また、ハーモニクスが出るポジションは機械的に決まっています。ですので、例えばフレットを押さえた時にはポジションがずれてきます。
以上を考えた時に、ブリッジ側でハーモニクスが出るポジションを触って同時にピッキングすることでハーモニクスを出すことが可能であり、実用であることが想像できると思います。
この方法をピッキングハーモニクスと言います。ピッキングハーモニクスは右手の親指もしくは人差し指で特定の位置を触って、人差し指、中指、薬指などで弦をピッキングします。
フレットを押さえている時には左手は使いづらく、この状態でハーモニクスを出したい時にはこのように右手でピッキングハーモニクスを出します。
フレットを押さえた場合には、0フレットからずれた割合分だけポジションをずらすとハーモニクスが出せるポイントを見つけられると思います。
ギターで言うピッキングハーモニクスと原理は同じものの、使い方は大きく異なるように個人的には感じます。まだまだ発展途上の技術なので、ベース独自の使い方を探りたいですね。
ハーモニクスを使った奏法を得意とするベーシスト
ハーモニクスを駆使するベーシストは数多くいますが、ぜひ参考にしてもらいたいベーシストを紹介します。
ジャコ・パストリアス(Jaco Pastorious)
ジャコはジャズの名バンドWeather Reportでの活動のほか、自身のプロジェクトやジョニ・ミッチェルなどのバンドで活躍したベーシストです。
圧倒的なテクニックによって奏でられるフレットレスベースのサウンドにやられてしまったベーシストは数知れず、世界で最も尊敬されるベーシストのひとりであることは間違いありません。
彼のフレットレスベースをプレイするテクニックは素晴らしいのですが、それと同等に高く評価されたのがハーモニクスを使ったプレイです。
当時そのような奏法を使うプレイヤーは彼の他におらず、まさにベースにおけるハーモニクス奏法のパイオニア的な存在です。
マイケル・マンリング(Michael Manring)
世界を代表するフレットレスベースプレイヤーのひとりです。彼はいわば「アフタージャコ」の存在で、ジャコが発見したり、開発したりした技術を用いてさらに発展させたベースプレイを得意とします。
ソロベースでのプレイが非常に美しく、ナチュラルハーモニクス、ピッキングハーモニクス、エクステンダーキーによるチューニング変化などを駆使して通常では考えられないサウンドを出します。
達人の域に達する彼のプレイは、ハーモニクスに興味があるのであれば必ず見るべきです。
ベースのハーモニクスが登場する曲
ベースでハーモニクスを出すことに興味があるのであれば、ぜひチェックしてもらいたい曲を紹介します。
Jaco Pastorious – トレイシーの肖像(Portrait Of Tracy)
ジャコ・パストリアスによるソロベースで奏でられるインストゥルメンタル曲です。
この曲が収録されているアルバムは、ジャコがWeather Reportに所属していた1976年に作られた初めてのソロアルバム、「ジャコ・パストリアスの肖像」です。
このアルバム自体がベーシスト的金字塔であることは間違いありませんが、金字塔たらしめている理由のひとつがこの曲です。
度肝を抜かれるという表現がありますが、最初の音から全てのベーシストは当時度肝を抜かれたことでしょう。
使われている音の多くがハーモニクスを使用しており、とてもベースが出している音域とは思えなかったと思います。
ハーモニクスだけに限らず、「トレイシーの肖像」が収録されている「ジャコ・パストリアスの肖像」は全てのベーシストが聴くべき(実際に聴いているはずです)アルバムです。
Squarepusher – Iambic 9 Poetry
トーマス・ジェンキンソン(Thomas Jenkinson)のソロプロジェクトであるSquarepusherはエレクトロニカのジャンルにおいて、圧倒的な存在感があります。実は彼はベーシストであり、その腕は超一流です。
名盤Ultravisitorに収録されるIambic 9 Poetryは美しいベースのハーモニクスを活用して構成されています。
サウンドの質やビートなどを含め、総合的に曲が美しく感じられるはずです。ベースのハーモニクスを使ったプレイはコピーして音源と一緒にプレイしたくなるのではないでしょうか。
まとめ
本記事ではハーモニクスの概念やベースでハーモニクスを出す方法やコツ、使えるコードなどを解説します。そしてハーモニクスの利用を得意とするベーシストやハーモニクスが登場する曲を紹介しました。
ハーモニクスは通常のベースプレイには不要と言えるテクニックではありますが、昨今ベースが担う役割は拡大し続けています。
新しい価値観や音楽を作っていくのであれば、ハーモニクスは十分に利用価値のあるものだと思います。上手く活用できるよう、本記事が参考になれば幸いです。
あわせて、ベースのオクターブ奏法のコツやベースのスラップの練習方法やコツについて別の記事でまとめています。ぜひ、参考にしてみてください。
嵯峨駿介 /
ビギナーズ編集部 ライター
23歳でベース専門店Geek IN Boxを立ち上げ。海外ブランドとの取引経験が豊富でアメリカ、ヨーロッパ、中国などの主要ギターショウに参加。ベースマガジンなどの専門誌や、ウェブメディアなどへの寄稿多数。※本記事の内容は嵯峨駿介個人の意見、知識を基に執筆しております。所属するベーシック株式会社及びGeek IN Boxの総意を代表するものではありません。