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【プロが教える】プレシジョンベースとジャズベースの違いを徹底解説
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フェンダー(fender)が1950年代から1960年代にかけて開発したプレシジョンベース、そしてジャズベースは以降半世紀以上もの期間その姿をほとんど変えずにミュージシャンたちに愛されています。
本記事ではそれぞれの概要のほか、細部に視点を置いて相違点を解説し、それぞれのモデルを愛用するアーティストを紹介します。
目次
プレシジョンベースとは
1951年、フェンダーが発売した世界初のフレット付きエレクトリックソリッドベースがプレシジョンベースです。
画期的だったのはフレットが取り付けられた点。これによって音程が簡単に正確に出せるようになり、多くの人々にとって演奏しやすいものになりました。
プレシジョンは英語でPrecision、意味は正確に、という意味でこの点に主眼が置かれた製品だったことが読み取れます。1957年にはマイナーチェンジが行われ、現在一般的な見た目のモデルに生まれ変わりました。
オリジナルプレシジョンベースとは
プレシジョンベースは年代によって少しずつモデルチェンジがおこなれました。1954年にはボディにコンター加工が施されて丸みを帯び、身体にフィットするシェイプに変更されます。また、ピックガードやカラーにもアレンジが施されました。
1957年にはヘッドシェイプ、ボディ材、ピックガードのシェイプ、ピックアップ、ブリッジが変更となります。
1957年に行われたマイナーチェンジは非常に大幅なもので、格段に性能がアップしました。現在一般的なプレシジョンベースはこのスタイルを指し、それに対してオリジナルプレシジョンベースとは1957年以前のものを指します。
フェンダーとしては改良という意味でアップデートを繰り返してきましたが、現在ではその違い自体に大きなメリットを感じるミュージシャンが多く、1957年以前のスタイルのオリジナルプレシジョンベースも愛されています。
ジャズベースとは
1950年代、フェンダーはプレシジョンベースやテレキャスターの開発によって大きく発展しました。さらなる進展を求めて作られた意欲作が1958年のジャズマスター、1962年のジャガー、1960年のジャズベースです。
立て続けにリリースされた3モデルは全てがオフセットボディを持ち、よりプレイヤーにボディがフィットしやすいボディシェイプになっています。
これらのモデルで採用された機能は非常に先進的で、当時は高級機種として発売されたことで知られています。
プレシジョンベースとジャズベースの違い
世界中のベーシストに「自分が持っているベースは何か」アンケートをとると、1番と2番には圧倒的な票数でプレシジョンベースとジャズベースが選ばれるはずです。それほどに、これら2本のベースは定番として多くのベーシストに愛されています。
新たにベースを購入しようとした時にはこれら2つは当然選択肢に入りますが、どちらかを選ぶには相違点を理解している必要があります。細かな点にフォーカスを当てて、双方の違いを解説します。
ナット幅、ネックの太さ
ナット幅はプレシジョンベースの方が大きく43mm、ジャズベースは38mmに設定されています(モデルによって若干の変動はあります)。わずか5mm程度の違いではありますが、この違いは大きく演奏性には大きく影響します。
ナット幅の違いから、ネックのグリップ自体の太さにも大きく影響し、やはりプレシジョンベースは大きく、ジャズベースは小さく感じられるはずです。どちらが優れているというわけではなく、この点は好みに大きくよる部分です。
この点はサウンドにも大きく影響を与えており、ネックの質量が大きい方がサウンドはタイトでダークに、小さい方がオープンなサウンドになる傾向があります。
元のネックシェイプの違いから、5弦ベースにした時の違和感はジャズベースの方が強く出てしまう傾向にあります。
ボディシェイプ
ジャズベースにはオフセット(左右非対称)の少し大きなボディが採用されています。体に当たる部分と肘が当たる部分は大きくカットされているので、演奏性は確保されています。
これに対してプレシジョンベースは左右対称のボディで、比べると少し小さく感じられるかもしれません。ジャズベース同様に身体に当たる部分と肘が当たる部分はカットされているので、演奏性は良好です。
このボディシェイプは大きく変更されることはなく、開発当初から高い完成度があったことを示しています。
ピックアップ
プレシジョンベースのピックアップは、2つのコイルを使用したスプリットコイルピックアップと呼ばれるものです。それぞれのコイルは高音弦と低音弦に分かれており、シリーズ(直列)接続で配線されるため音量が大きく太いサウンドが得られます。
ジャズベースは2つのシングルコイルピックアップがネックよりとブリッジよりに配置され、それぞれは単体もしくはミックスで出力することが可能です。これによってサウンドには幅が出て、特にミックスではタイトでキレのあるサウンドが得られます。
ジャズベースは2つのピックアップをパラレル(並列)で配線します。これは、2つのピックアップのバランスを自在に変化させるためで、そのためにプレシジョンベースとは大きくサウンドが異なります。
現在では、ジャズベースの2つのピックアップをシリーズで接続する機能を搭載したベースも少なくなく、その場合には今までにはなかったパワフルなサウンドが得られます。
コントロール
プレシジョンベースはピックアップ1つに対してボリュームと、高音域を調整するトーンの2つのノブが搭載されます。非常にシンプルな構成です。
対してジャズベースはそれぞれのピックアップのボリュームと、全てに影響するトーンの3つのノブを搭載する構成が一般的です。古いモデルでは特殊なノブ(いわゆるスタックノブ)を用いて2ボリューム2トーンの構成のジャズベースも存在しました。
これらのコントロールを基本として、現代的なモデルではイコライザーを搭載したり、ピックアップのワイヤリングを変更するスイッチを搭載したりすることもあります。
音の方向性
プレシジョンベースは野太く、ストレートなサウンドが特徴的です。古いソウルで聴かれる太くていなたいサウンドや、パンクロックなどで聴かれるゴリゴリとしたサウンドにはプレシジョンベースのサウンドが欠かせません。
ジャズベースはタイトでスマートなサウンドが特徴的です。プレシジョンベースに比べてよりタイトで高音域はきらびやかなため、派手な音色や安定感のある低域を好むベーシストにおすすめです。
ピック弾きをメインとするベーシストはプレシジョンベースを愛用していることが多く、スラップを得意とするベーシストはジャズベースを愛用していることが多いです。もちろん必ずしもそれぞれが適しているわけではありません。
ジャズベースを愛用するアーティスト
歴史的なモデルであるジャズベースは、多くのアーティストに愛用されています。こちらではジャズベースを愛用する代表的なアーティストを紹介します。
ジャコ・パストリアス(Jaco Pastorious)
ジャコ・パストリアスは世界で最も尊敬されるベーシストの1人です。フレットレスに改造したジャズベースを用いて圧倒的なテクニックを表現しました。
人気のジャズバンドウェザー・リポートでの活動のほか、ソロアルバムやジョニ・ミッチェルなどの作品でも活動しており、活動期間こそ長くはなかったものの彼の影響は絶大です。
彼を知らずしてベーシストを名乗ることは難しいほどに、絶大な人気を誇るレジェンドベーシストです。
マーカス・ミラー(Marcus Miller)
高度なスラップテクニック、アフリカンなグルーヴ、ジャズメンとしての実力、コンポーザーとしての技量、あらゆる点においてパーフェクトなベーシストがマーカス・ミラーです。
ロジャー・サドウスキーがモディファイした彼のジャズベースはあまりにも有名で、彼のベースや彼のベースプレイを真似たフォロワーは多数。彼が登場した1970年代から現在に至るまで、絶大な人気を誇ります。
マイルス・デイヴィス、ブレッカー・ブラザーズ、ジョージ・デュークなど、かず多くの巨人たちと共演しています。
プレシジョンベースを愛用するアーティスト
プレシジョンベースもジャズベースと同様に、伝統的に多くのアーティストに愛用されてきました。中でも一際人気の高い名手を紹介します。
ジェームス・ジェマーソン(James Jamerson)
ジャクソン5、マーヴィン・ゲイなど、当時のトップアーティストの多くがモータウンというレーベルから作品をリリースしました。そのモータウンレーベルのレコーディングにおいて、伝説的な存在になったのがジェームス・ジェマーソンです。
自在にグルーヴを操り圧倒的な存在感を示した彼のベースプレイは今でも愛されており、現代の音楽においても模倣されています。
ファクマシーンと呼ばれる彼の愛機にはラベラ製のフラットワウンド弦が異常なほどに高い弦高でセッティングされていたそうです。もしも彼のサウンドを真似たいのであれば、同様のセッティングを試してみてはいかがでしょうか。
スティーヴ・ハリス(Steve Harris)
伝説的メタルバンド、アイアン・メイデンのベーシストとして一世を風靡したのがスティーブ・ハリスです。
強くて速い彼のベースプレイは多くのフォロワーを生み出し、プレシジョンベースの万能性を世界に広く知らしめました。
シグネイチャーモデルのベースやピックアップが発売されているので、もしも彼のサウンドを強く多い求めるのであればそれらを購入してみても面白いと思います。
まとめ
本記事ではプレシジョンベースとジャズベース、それぞれの特徴や相違点、愛用するベーシストを紹介しました。
どちらのモデルも圧倒的な定番モデルとして長い間世界中のベーシストに愛されています。どちらのモデルも所有しているベーシストは非常に多く、シチュエーションによって使い分けられています。
長い歴史の中でほとんど変更が行われいない洗練されたデザインの2機種。ベーシストであれば一度はどちらも手に入れておきたいですね。
また、こちらの記事では初心者の方々は必見なベースの奏法の違いを解説していますので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
嵯峨駿介 /
ビギナーズ編集部 ライター
23歳でベース専門店Geek IN Boxを立ち上げ。海外ブランドとの取引経験が豊富でアメリカ、ヨーロッパ、中国などの主要ギターショウに参加。ベースマガジンなどの専門誌や、ウェブメディアなどへの寄稿多数。※本記事の内容は嵯峨駿介個人の意見、知識を基に執筆しております。所属するベーシック株式会社及びGeek IN Boxの総意を代表するものではありません。