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ピアノの調律ってどうする?調律の三本柱から頻度、注意ポイントまで徹底解説

ピアノの調律について、頻度や注意しておきたいポイントなど詳しく紹介します。ピアノの種類や使用、環境別に徹底解説。ピアノは持っているけど調律などのメンテナンス方法がわからない方人は参考にしてみてください。
ピアノの調律ってどうする?調律の三本柱から頻度、注意ポイントまで徹底解説

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ピアノという楽器は、弱い音(ピアニッシモ)からだんだん強く(クレッシェンド)を効かせて、強い音(フォルテ)までの強弱や、やや強く(メゾフォルテ)などの繊細な強弱を使い、音色を奏でていきます。

そのような豊かな表現ができる特性を活かし、美しい音を奏でるには定期的な点検と調整が必要となります。それが「調律」です。

今回はそのピアノに欠かせない「調律」の大切さや頻度について解説していきます。

ピアノの調律の三本柱「調律・整調・整音」

ピアノの調律は大きく分けて「調律・整調・整音」の3つの方法で行います。どの工程も高度な技術を必要とします。ここではその3つの工程について説明していきます。

音の高さを調節して音律を作る「調律」

弦の張力を加減しながら音の高さを調節して音律を作っていく作業です。ほんのわずかな張力でも音の高さは変わってきますが、まずそれを聞き分ける耳が必要になります。

経験を積むうちにその感覚が徐々に身についてくると言われていますが、最初はその微妙な差すらも分からないくらいとても難しい作業となります。

さらに弦1本あたりの張力は約90kgもありますので、チューニングピンをまわす力加減と繊細さも要求されるため、非常に難しい工程で、調律作業の心臓部です。

ピアノを弾きやすい状態にするために動きを整える「整調」

打弦機構である鍵盤やアクションの動きを整えることで、ピアノの弾き心地を調整するものであり、弾き手によって調整することが重要となります。

プロであればなおさらタッチが重要になりますので、自分の弾きやすい、音を表現しやすい状態にすることが目的となります。ハンマーと弦のリリースポイントをどの深さで調整するかというのが実際の作業です。

ハンマーを調整し、音色や音質を調整していく「整音」

音色や音質を調整する工程です。ハンマーのヘッド部分を針で刺したり、やすりでこすって形を整えながら弦からハンマーがリリースするタイミングを細かく調整します。

経年劣化でハンマーのヘッドはフェルト製なので硬くなります。そうすると、音色や音質が悪くなってしまいますので、特にコンサートで使用されるグランドピアノはホール全体とのバランスも必要だそうです。

調律で一番大事なことを徹底解説

ピアノの調律は、音を合わせるためだけに行う作業ではないことをご存知ですか?

調律は人間でいう定期検診のようなもので、音だけでなくピアノ全体のコンディションを整えるのが目的です。

長年放置したピアノは、内部に埃がたまって害虫が発生したり、湿気で弦が錆びて断線したりなどのトラブルが起こってしまいます。このような事態を防ぐためには、定期的に調律を行うことが重要です。

「また使うことになったら調律すればいい」と考える方もいますが、ピアノは放置期間が長くなればなるほど傷みが激しくなる一方です。その結果、ピアノ修理や調整に時間と手間がかかり、メンテナンス費用もかさんでしまう場合があります。

長い目で見れば、定期的に調律を行うことで様々な負担を軽減できるのです。なので調律で一番大切なことは「定期的に、継続して調律をする」ということです。

まずはどういう要因で音に狂いが生じてしまうのか確認していきましょう。

長時間ピアノを弾く使い方の場合

一日何時間も弾き続けるような使用頻度となると、狂いが早くなります。鍵盤を叩くとハンマーが弦を叩き、弦が振動します。すると、何十トンもある弦の張力が少しずつ緩んでいきます。

長時間弾くことで、これが加速するのです。

ピアノの置かれた環境は大丈夫ですか?温度、湿度の激しい変化は重要です!

意外と知られていなませんがこの温度、湿度の極端な変化です。ピアノを置く環境は、15~25℃、湿度は40%~60%の範囲に保つのが良いとされています。

しかし、湿度が多少高め、あるいは温度が高め、あるいは低めでも、その状態が一定であれば、音の狂いは案外出にくいという意見を持つ調律師は実は多くいます。

急激な変化を起こすとは、具体的にはどういったことかというと、いちばんわかりやすいのが、季節の変わり目です。春の乾燥した時期から6月の梅雨の湿った時期にかけては、湿度の変化が激しくなります。

それから、冬の寒い部屋で急激にエアコン、ストーブなどで温める、あるいは夏のジメジメした時期の部屋、除湿機を入れたり消したりするなどです。

こういった季節要因や習慣の繰り返しを続けると、音の狂いが早くなりやすいので注意が必要です。

ハンマーの劣化

ピアノ初心者だと、意外に見落としがちなところです。“音がぼやけている“または”強く鍵盤を叩いているのに迫力ある音がでない“こんなふうに感じ始めたことはありませんか?それは調律のせいではなく、ハンマーが劣化しているせいかもしれません。ピアノを購入してから、3年以上たち、毎日よく弾いているような方は、要注意です。

ハンマーは、羊毛からつくられた柔らかいフェルトでできています。このハンマーが弦を叩いて音をだすため、ピアノをたくさん弾くことで、このハンマーがつぶれたり、固くなったりして、劣化を早めてしまいます。

こうなると、音がおかしい、狂っているという状態に感じてしまいます。ただ練習をする事だけでなく、ピアノの状態を感じ取ってあげることも大切です。

調律頻度が少ないと・・・?

ここからは、調律の頻度の問題です。調律の頻度を少なくすると、どんな問題が起こりやすいかについて、まずは考えてみましょう。

調律の頻度が少ないということは、調律をした日から次に調律をするまでの期間が長くなってしまうことです。たとえば、調律師に久しぶりに調律を頼むときに、3年、あるいは10年空いてしまった・・・などと伝えますね。そういった状態のことです。

調律をしても音程がすぐにいい状態にならないピアノになってしまう!

久しぶりに調律をしようとすると音程がかなり下がってしまっているケースが多くみられます。その場合、音程が下がったり、狂った音で弦が固定されているピアノは、すぐに適正な状態にもどすのが難しくなります。

仮に一気に適正な音域にもどしてしまうと、いろいろリスクが生じてきます。一気に音域を上げてしまうと、すぐに下の音域へもどろうとして音程もすぐに下がってしまうのです。

それまで低い音域で安定していた弦は、すぐには適正な位置でピタッとは止まってくれません。

それから、リスクとしては、急激に弦を止めているピンを回し、音程を上げることで、そのピンのネジ下にある木の部分が、痛みやすくなることです。

もしこういった極端に音程が低い状態になってしまった場合、ピアノ調律師は、通常、調律を何回かに分けて元の音程にもどしていく提案をしてきます。

このように何回かに分けて調律するとなると結局コスト面でも負担になっていきます。

サビや虫食いの可能性がある

初めにお話しした通り、調律は健康診断でもあります。定期的に点検することで、サビや虫食いを防ぐことができたり、早期発見することができます。

ピアノを使う側としては必ず健康診断を受けさせてあげることが、ピアノに対する日ごろの恩返しとなるのではないでしょうか。

弾き心地が悪くなってしまう

調律師は、調律のために訪問して、調律という音合わせだけをするのではありません。そのピアノが弾きやすい状態にあるのかどうか、その機構をチェックすることを必ず行います。ピアノは膨大な数の部品から成り立っています。

ピアノを気持ちよく鳴らすには、それらの部品同士が、うまく作用する必要があります。それらの部品に不具合がないか、チェックしてくれるのも調律師の仕事です。

もし調律という音合わせだけをして、機構の不具合のチェックをしなかったとしたら、弾き手は、なにか気持ちよく弾けないという感覚を持つでしょうし、音もきちんと合っていない、出ていないという不満をもつことになるのです。

このようなことから、調律の頻度を少なくすると、こういった鍵盤の機構の不具合に気づかずに、そのまま弾き続けてしまうリスクが高まってしまいます。

ピアノ個体別・使用別・環境別によって違う頻度の目安

ピアノを長い間調律せずに弾いていると、ピアノの音のズレだけでなく、狂った音を発するズレた弦の位置を弦が「居心地が良く」なりその位置に戻ろうとし続けます。何度も適切な時期に調律を行うと、正しい音に近い位置が「弦の落ち着きが良い場所」となり、音が狂いにくくなっていきます。

ピアノは常にゆっくりと狂い続けています。また、購入したばかりの新しいピアノの場合は、まだ弦が伸びきっておらず安定しないため、年に数回の調律が必要となる場合があります。

逆に調律しすぎもよくないということも大事なポイントです。もちろん、メンテナンス上は、とても良いです。それだけ調律師にチェックしてもらうことになるからです。

先ほど「調律の頻度が少ないことによるデメリット」でもお伝えしましたが、調律をしすぎると、弦を巻いているピンのネジが傷みやすくなります。ネジ穴は木の板でできており、調律で何度も締めたり、緩めたりしているとだんだんしっかり止まらなくなってきます。

このピン板の交換となると、たいへんな作業と料金になってしまいます。このようなことから一概に調律をたくさんやればよいというものでもないです。

ピアノ個体別頻度目安

あくまでも目安となりますが、新品のピアノの場合、しばらく音が落ち着くまでは1年に数回する必要があります。数年以上経ったピアノは一般的な頻度と同様、1年に1回程度でいいと言われています。

古いピアノは数年に1回。これは調律によって弦が切れたり、破損するリスクもあるためです。音域をどこまで上げるかも調律師と相談する必要があります。

このようにピアノの年式によって、調律の頻度が変わるので、注意してください。

ピアノ使用別頻度目安

ピアノの先生や、同じくらいよく弾く場合は半年に1回。よく弾く分、弦やハンマーの劣化が激しくなるので、メンテナンスをしっかりする必要があります。

その他にも小さな子供が弾く場合と大人が趣味程度で弾く場合は1年に1回が好ましいと言われています。毎日弾かないからあまりしないではなく、定期的にするということを忘れないでください。

逆にほとんど弾かない、置物状態のピアノであっても、数年~5年に1度は調律をして、キープすることが大事となります。

ピアノ環境別頻度目安

環境というのが見落としがちなポイントですが、先ほど少し話した通り、ピアノを置く環境は大事ですが、ほとんどピアノを弾かないため、ピアノをどうしてもその場所から変えられない場合はしっかりメンテナンスしてあげることで、補うことができます。

部屋の温度、湿度変化が激しい環境に置かれている場合は、半年から1年に1回、温度や環境変化が一定の場合であれば数年から5年に1回することをおすすめします。

調律の作業時間と気になる金額は?-家庭用ピアノの場合-

調律作業の工程や必要頻度を知ると、調律の大事さがわかってくると思います。実際に調律をしたいけど、気になることはたくさんあると思います。

特に金額や頻度、そして作業時間など気になると思います。次はその3つについてお話していきます。

調律作業時間はどのくらい?

一般ピアノの調律だと、1時間から1時間半程度といわれています。ただしそれは、定期的に調律をしているピアノの場合です。久しぶりの調律の場合、状態によっては時間がかかってしまったり、また半年後に見せてくださいと言われてたり、元に戻すまで時間がかかる場合があります。

調律にかかる金額はどのくらい?

ヤマハなどの楽器店でピアノを購入した際は、楽器店専属の調律師さんが紹介されることが多いですが、まず一般的な相場を見てみましょう。

アップライトピアノで、8,000円~15,000円。グランドピアノで10,000円~20,000円が大体の相場です。個人で営業している調律師の方にお願いすると、もう少し価格に幅が出てきます。

他にはこだわりの調律となると30,000円ほどだったと思います。もちろん、楽器店よりもリーズナブルに見ていただける調律師さんもいらっしゃいますのでネットで探してみるのもいいかと思います。

定期的にすることで、ランニングコストダウンにもつながります。定期的にしていないと、“弦の落ち着きのいい場所“を戻してあげるために何度か調律をする必要がでてきます。更にその場合はピアノの音が短期間でズレとなり、また調律をしなければならなかったり、調律料金が高くなってしまう為、結果的に、適切な時期に調律をしてあげた方が安上がりとなる場合があります。

調律前に必要な準備は?

調律業者に依頼する場合、作業前に済ませておきたい準備がいくつかあります。こちらも合わせて準備しておくと当日の作業がスムーズになったり、よりよい音になるため、ぜひチェックしてみてください。

物を片付けておくとスムーズに作業ができる

調律はピアノの蓋を開け、中に手を入れて行います。蓋の上に物が乗っていると、片付けから始めなくてはなりません。

また、アップライトピアノの場合、下部のパネルを開けることもあります。そのため、調律前にピアノの上や足元、周囲にある物を片付けておくと、スムーズに作業が行えます。カバーをかけている場合も外しておくことをおすすめします。

あらかじめ冷暖房を入れて一定の温度・湿度を保つ

温度や湿度の変化はピアノの調律に影響することがあります。調律直前に冷暖房を入れると作業中に室内の温度・湿度が変わり、作業がやりづらくなってしまいます。冷暖房で一定の環境を整えておくと、安定したピッチに調整できます。冷暖房が特に必要な季節なら、あらかじめ冷暖房を入れておくことをおすすめします。

音色のリクエストも可能!持ち主の求める音を作り出す調律師

音の感じ方は人それぞれですが、もう少し明るくしてほしいや、重みのある音がいいなど、さまざまなリクエストが可能なことを知っていましたか?

なかなか初心者の方だと言いにくい面もありますが、たくさんピアノを弾く演奏者の方、コンクールなどに出ている方はよく自宅のピアノを調律師さんと作り上げているようなイメージです。毎日弾いていることもあり、それだけ音にも敏感だからこそかもしれませんが、そのようなリクエストができるようになったら上級者ですね!

調律のことをもっと知りたい方におすすめ『羊と鋼の森』

第13回本屋大賞を受賞した小説『羊と鋼の森』。ピアノの調律師の世界について描かれたこちらの小説は、とても分かりやすく、さらにピアノの繊細さまで描かれている作品です。

2018年には映画化もされており、調律の工程から、登場人物それぞれの感じ方など、映像だとより分かりやすくなっていますので、ぜひチェックしてみてください!

まとめ

いかがでしたか?ピアノはとてもデリケートな楽器です。ピアノを長く使用していくために調律の頻度は正しく守るようにしましょう。長くピアノを放置していると、特に状態の変化には気が付きにくくなります。“使っていないからいい!“とは思わずに、調律の頻度は守り、いつでも素敵な響きを奏でられるようにしてあげましょう。

こちらの記事では、ピアノ初心者におすすめの曲や、大人にもおすすめのピアノ教室をご紹介しています。

伊藤しおり /
ビギナーズ編集部 ライター

趣味はピアノを演奏することと、野球観戦。 現在は自宅でピアノ講師をしながら、演奏活動をして音楽を楽しんでいます。野球も小さい頃から好きなので、音楽もスポーツもどちらの楽しさもお伝えできたらいいなぁと思います!

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